隣の席の悪魔

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「ユキ、南雲と何話したの?」 「南雲君が誰かと話してるの初めてみたかも!」 「何かあったの?」 多分そんなような事を言っていた。身を寄せ合って小声で話していたから、他のクラスメート達の話し声でほとんど聞こえなかったのだから仕方ない。 「何でも無いよ!本当に何でも無いの!」 慌てて誤魔化そうとしてるけど、誰がどう見ても誤魔化せていない。噂の南雲はといえば、自分は関係ないとばかりにさっきまで読んでいた本の続きを読んでいるだけだ。 動いてしまったのは、イラっとしたからに他ならなかった。 「早見が落し物して、南雲がそれを拾っただけだよ」 後ろから声をかけられた早見が振り返る。隣で静かにしていた南雲もキョトンと俺を見た。俺は南雲を睨みつけ、ちょいと顎で早見を示す。すると察したようで、南雲は、ああ、と小さく声を漏らした。そうだよ、と言って南雲が微笑むのとチャイムが鳴るのは、ほぼ同時だった。 早見を取り囲んでいた女子が、なんだーそっかーなんて言いながら自分の席に戻る。 早見は安心したように肩から力を抜いて、俺に振り返った。 「ありがとう、東野君」 笑顔でその言葉を貰えただけで、イラついていたことを忘れるくらい胸が温かくなった。俺が笑顔を返すと早見は、今度は南雲を見た。その視線につられるように俺も南雲を見たけど、既に読書に戻っていた。 あの、と早見が声をかけようとして、教室の扉を開いて先生が入ってきてしまって、それはかなわなかった。 それから日曜日を挟み、また学校が始まり、日々学校に通い一週間が過ぎようとしていた。その間、南雲と早見が口をきくことはおろか、目が合うようなことも無かった。 学校に来ると南雲は授業中以外はずっと本を読んでいて誰かと話す様子もなく、放課後になれば誰とも挨拶をせずにさっさと帰る。早見はというと、友達と話すか課題をやるかくらいで、放課後も教室に残って友達と話したり遊びに行ったりするだけ。 「早見は、南雲と付き合いたいとか思わないのか?」 思わずそう聞いたのは、当番で居残り掃除をしていて、廊下で二人だけになった時だった。 「え!?」 前触れもなく突然振られた話題に大いに驚いて、早見は持っていた箒を手から滑らせた。カシャンと乾いた音をたてて倒れた箒を慌てて持ち直す。
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