シキ

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そうそう簡単に機械は壊れないから、死なない、死ねない。 これが「技術」というモノを追及し続け、発展を繰り返して来た証。そして、代償。人間が起こすべきして、起こしてしまった、最終形態。 生きたいのなら、人口が溢れるまで生き続ければいい。自然の死というものは、もう存在しない。溢れれば「削除」すればいい。 此処はそういう世界。俺が生きている場所、「地球」。 「あ、ヒロ!帰ってたんだね、おかえりなさい!」 「・・・・・・。」 彼女は洗濯篭を持ちながら、階段を掛け降りて来た。今日も笑っている。いつも笑っている。それが煩わしく思い、俺は無言で部屋に入って行った。 彼女の名はユキ。なんとなく、一緒にいる住人だ。 「お腹空いた?ご飯作るね!んー、何がいいかなぁ?何か食べたい物はある?」 俺が椅子に座って本を読んでいると、向かい側に立ち、話し掛けて来た。俺は無視をした。 「ねー、聞いてる?何がいい?わっ、この本、文字ばっかり!これ、面白い?」 ユキは俺の本を取り上げた。 「別に。時間が余っているから、読んでいるだけ。それに、腹は減らない。食べなくても死なないし、死ねない。」 「もぅ、人間は食べて生きて行くんだよ!だから、食べなきゃ!」 「俺達は人間じゃない。機械だよ。」 俺は淡々と答えた。ユキが大人しくなったので、本を取り返し、目線を本へと移した。 「…違う、違うよ!私も人間で、ヒロも人間 なんだよ!」 時間が有り余るこの世界で、この言い争いも何度目だろうか。 ユキは初期の機械だからか、俺よりも人間臭さが残っている。俺から言わせれば機械に成りきれない欠陥品。喜怒哀楽をコントロールし、感情というものをぶつけて来る。その一喜一憂の消費になんの意味があるのか、俺には理解出来ない。 だからと言って、この言い争いの先に何も得る物がない事を俺は知っている。 だったら、するだけ無駄だ。俺は無意味な事はしたくない。 「…じゃあ、食べるからユキがやりたいようにやって。」 「うー、ヒロが食べたいのを作りたかったんだけどな…、仕方ないか。」 不服そうな顔をするユキ。結局、俺は疲れる。ユキは器に「食材」となる「ICチップ」のような物を入れ機械にセットした。
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