0人が本棚に入れています
本棚に追加
そうそう簡単に機械は壊れないから、死なない、死ねない。
これが「技術」というモノを追及し続け、発展を繰り返して来た証。そして、代償。人間が起こすべきして、起こしてしまった、最終形態。
生きたいのなら、人口が溢れるまで生き続ければいい。自然の死というものは、もう存在しない。溢れれば「削除」すればいい。
此処はそういう世界。俺が生きている場所、「地球」。
「あ、ヒロ!帰ってたんだね、おかえりなさい!」
「・・・・・・。」
彼女は洗濯篭を持ちながら、階段を掛け降りて来た。今日も笑っている。いつも笑っている。それが煩わしく思い、俺は無言で部屋に入って行った。
彼女の名はユキ。なんとなく、一緒にいる住人だ。
「お腹空いた?ご飯作るね!んー、何がいいかなぁ?何か食べたい物はある?」
俺が椅子に座って本を読んでいると、向かい側に立ち、話し掛けて来た。俺は無視をした。
「ねー、聞いてる?何がいい?わっ、この本、文字ばっかり!これ、面白い?」
ユキは俺の本を取り上げた。
「別に。時間が余っているから、読んでいるだけ。それに、腹は減らない。食べなくても死なないし、死ねない。」
「もぅ、人間は食べて生きて行くんだよ!だから、食べなきゃ!」
「俺達は人間じゃない。機械だよ。」
俺は淡々と答えた。ユキが大人しくなったので、本を取り返し、目線を本へと移した。
「…違う、違うよ!私も人間で、ヒロも人間 なんだよ!」
時間が有り余るこの世界で、この言い争いも何度目だろうか。
ユキは初期の機械だからか、俺よりも人間臭さが残っている。俺から言わせれば機械に成りきれない欠陥品。喜怒哀楽をコントロールし、感情というものをぶつけて来る。その一喜一憂の消費になんの意味があるのか、俺には理解出来ない。
だからと言って、この言い争いの先に何も得る物がない事を俺は知っている。
だったら、するだけ無駄だ。俺は無意味な事はしたくない。
「…じゃあ、食べるからユキがやりたいようにやって。」
「うー、ヒロが食べたいのを作りたかったんだけどな…、仕方ないか。」
不服そうな顔をするユキ。結局、俺は疲れる。ユキは器に「食材」となる「ICチップ」のような物を入れ機械にセットした。
最初のコメントを投稿しよう!