シキ

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「へへっ、そうだよ!暖かい太陽の光と、澄んだ空気、ふかふかな土に、透き通った水。だから、花は生きていられたし、ないと生きられなかった。」 「じゃあ、人間は図太いね。「自然」っていうのがなくなろうと、「機械」に成り下がってまで生きているんだから。その時に一緒に滅べば良かったのに。こんな「世界」で何が楽しくて生きて行かないといけないのか…。」 「…誰だっていなくなる事は怖いよ、悲しいよ、淋しいよ…生きられる選択があるなら、生きていたいって思うもん…。」 ユキが悲しそうな顔をするのを切り裂くかのように俺は言い放つ。 「それは、この「紙切れ」が「キタ」から、そう思うの?」 「紙切れ」=「死の宣告」。つまり、もう「用済み」だから、「スクラップ」になれとの政府からの通達。 「ははっ、ヒロは知ってたんだね。」 「うん、知ってた…でもいつかは知らない。いつなの?」 「へへっ、内緒だよ。」 「ふーん…」 「ヒロは淋しくない?私はヒロと離れるのが淋しいよ。」 「…分からない。だって、ユキがいなくなった事がないから。」 「そっか…そうだね…。あ、食べ終わった?じゃあ、一緒にお風呂入ろうか!そして、一緒に寝よう!」 「うん。いつもと同じだね。」 「そうだよ、いつもと同じだよ。いつもと同じがいいの。いつもヒロと一緒がいいの。」 「…分かった。」 ユキがそうしたいなら、そうすればいい。俺は良く分からない…。 いつもと同じように風呂に入り、いつもと同じように寝た。 ユキはいつも俺のすぐ傍で寝る。たまに手を繋いで来る。何故、そうしたいのか…怖いから?悲しいから?淋しいから? 気が付くと、俺は違う「世界」、「夢」にいた。 夢の中でふと思った。 ユキが「花」を綺麗だと言っていた。確かにあの写真が頭から離れない。 「夢」というこの「世界」でなら「花」はあるのだろうか。 俺はあてもなく歩き始めた。 「花」って奴は何処にあるんだ?どう「生きて」いるんだ? 「なぁ、「花」って奴を知らないか?」 俺は本で見た、「蝶」という生物に話し掛けた。 「知らない、知らないよ。」 そう言うと「蝶」って奴は、俺の傍で羽をキラキラと輝かせて飛んで行った。青や赤の残像が目の奥で眩しい程に。 「なぁ、「花」って奴を知らないか?」 俺は本で見た、「月」という天体に話し掛けた。 「知らない、知らないな。」
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