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そう言うと「月」って奴は、俺の頭上で様々な形をして見せた。何故形を変えるのか、俺は知らない。
「なぁ、「花」って奴を知らないか?」
俺は本で見た、「木」という植物に話し掛けた。
「知らない、知らないね。」
そう言うと「木」って奴は、「林檎」や「団栗」、「巣」などを「身」に付けて、俺へと落とした。何が落ちて来るのか、少し興味が沸く程に。
だけど「花」って奴はみつからない。ユキは言っていた。何処にでも生きていたと。でも「それ」は、どんな場所で、どう生きているんだろう。分からない、知らない…。
「くすくす、くす、くすくす…」
何処からか、笑い声が聞こえる。ふと後ろを振り返ると、いつからそこにいたのか、面を被った、小さなヒトガタがいた。
「本で見た。お前は妖精か小人だろ。」
機械とは違う「それ」に、俺は問い掛けた。
「くすくす…知らない、知らない。僕は誰?君は誰?」
「妖精や小人でないなら、俺はお前を知らない。俺はヒロ、機械だ。」
「機械?機械?人間?人形?僕は誰?君は誰?変なの、変なの。」
「どれも一緒だ、言い方は違うが、意味は同じ。」
「変なの、変なの。それなのに無知なんて変なの。」
「俺が無知?」
「僕が教えてあげる、見せてあげる、魅せてあげる。」
お面の「それ」がそう言うと、景色が変わった。
「「蝶」も、「月」も、「木」も「言葉」は話さないよ。」
「そうなのか?でも生きているんだろ?ユキ が教えてくれた。ユキが嘘を付いたのか?」「ユキ?ユキ?ユキは嘘付きなの?」
「違う。ユキは嘘を俺には教えない。ユキは俺に色々な事を教えてくれた。本だけでは分からない事もユキは教えてくれる。自分の知っている事をいつも嬉しそうに俺に教えてくれる。」
「ユキ、ユキ。ユキの知っている世界。ヒロの知らない世界。ユキ嬉しい、ヒロつまらない。」
また景色が変わった。
「これ「蝶」。ヒラヒラ舞う。色、イロイロ。大きさ、イロイロ。鱗粉と鱗毛で彩られる。美しく、美しく、彩られる!」
仮面の「それ」がそう言うと、幾つかの蝶が俺の周りを飛んだ。風が吹くくらい沢山の蝶が舞う。そして、また景色が変わる。
「あれ「月」。優しく光る。夜だけ光る。太陽の光で光る。形、イロイロ?何日か掛けて満ち欠けする。兔!兔!いない、いない!」
仮面の「それ」がそう言うと、太陽の光で光る仕組みを俺に見せた。初めて満ち欠けを知る。そして、また景色が変わる。
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