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「じゃあ、ヒロは人間?人間!」
「そっか…ユキが言うんだから「人間」なのか。でも、俺は「人間」に成りきれない。ユキが…羨ましい……。」
「羨ましい!羨ましい!大丈夫、ヒロ、大丈夫!」
「何が大丈夫なんだ?俺はユキがいないと何も知らない。誰が俺に教えてくれるんだ?誰が俺の傍にいてくれるんだ?俺、ユキがいないと「ナイ」感情が本当になくなる…」
「大丈夫、ヒロ、大丈夫!」
「俺はきっと怖いんだ。悲しいし、淋しいよんだ。ユキがいなくなる。ずっといなくなる。もう二度と会えない…」
「ユキは「機械」?なら、また作ればいい!」
「違う。ユキは一人だ。たった一つしかない「人間」だ…。笑顔がもうなくなる。声が聞こえなくなる。いつもいたのに、いなくなる。洗濯場に行っても、キッチンに行っても、何処を探してもユキがいなくなるんだ。二度と会えないって、そういう事だよな…。」
俺はユキが今までしてくれた事が、「二度」とない事に感情が止まらなくなった。
「一緒にお風呂も入れない。一緒に眠る事も出来ない。ユキが手を繋いで来る。ユキが頭を撫でて来る。ユキがギュッと抱きしめて来る。ユキが…ユキが…でも、俺はユキに何もしてやらなかった。なのに、ユキはいつも笑うんだ。俺には分からない…何故ユキは笑うんだ?ユキが教えてくれなかったから分からない。ずっとずっと、分からないままだ…。」
「ユキは欠陥品。ユキは欠陥品。ユキは欠陥品。ユキは欠陥品。ユキは欠陥品…」
「違う!違う!!違うっっっ!!!」
俺はお面の「それ」を地面へと叩き付けて壊した。きっと「これ」は「怒り」。
「ユキは欠陥品なんかじゃない。「人間」だ。俺も「人間」で、俺が欠如しているんだ。ユキは…ユキは生きている。生きた人間…だから、いつもユキは温かいんだ…。」
気が付けば、お面の「それ」はいなくなり、ぐねぐねと歪んだ世界へと変わっていた。きっと「これ」は「恐怖」。
怖い、怖い、悲しい、悲しい…手で顔を覆うと真っ暗になり、「恐怖」が俺を浸食して行く。増幅して行く。
暗い中で一人は淋しい…。広い、広い世界で一人は淋しい…。ユキが近くにいない。傍にいない。それだけで心が掻き乱される。引き裂かれる。俺は…人間?
「ヒロはね、人間だよ?だから、怖がらないで、悲しまないで。」
ユキの声がした。ユキの臭いがした。ユキの温かさ、ユキの優しさ…。
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