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―――黄金騎士。
魔獣ホラーにとって、その名を知らぬ者はいない。
人間達がホラーを怖れるように、ホラーにとって魔戒騎士は唯一の天敵。
ましてや、それが黄金騎士となれば――――。
ザルバの言葉にホラーは腰を落とし少しずつ後退りする。 眼前に佇む、黄金騎士――――冴島鋼牙を見据えながら。
弱々しく後退するホラーに対し、魔戒剣を手に鋼牙は前進する。 その眼は一切の隙を見逃さない鋭い眼光を放つ。
気付けばホラーの背には壁が迫り、それを待っていたのか跳躍、壁に両脚を着け勢いよく蹴り迫る――――鋼牙目掛けて。
「はあッ!」
「――――ッ」
――突然の不意討ち。だがホラーの拳は鋼牙に触れる処か、体に衝撃を受ける。
迫るホラーに合わせるように上体を後方に反らし片手を地面に着け、飛来したホラーの胴体へ数発、蹴りを叩き込む。
結果、ホラーは逆再生のように壁に叩きつけられる。
倒れ込むホラーにトドメを刺す為、鋼牙は一気に距離を詰め魔戒剣を振り降ろす―――――が、振り降ろした刃がホラーに届く事はなかった。
突如、鋼牙の体が宙を浮き後方に飛ぶ。
空中で態勢を立て直し着地、鋼牙の眼には自身を襲ったソレが映る。
―――長く、先が尖った尻尾。
それが、女性の体から生え鋼牙を弾いた原因だった。
そして、女性は腕を交差させ振り抜くと同時に女性の肉体が辺りに弾け飛ぶ。
尖った耳にギラついた眼、全身を覆った深みのある濃い緑の体色。 まるで、西洋の゙悪魔゙の姿そのもの――――魔獣ホラー、本来の姿である。
『やっとお出ましだ。鋼牙、遠慮はいらないぜ』
ザルバの言葉に反応するように、鋼牙は右手に握った魔戒剣を頭上に突き上げ、クルリと円を描いた。
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