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魔戒剣によって描かれた円から光が溢れ出し、鋼牙の姿を隠すように光が降り注ぐ。
その強烈な光はホラーの視界を一瞬奪う程の輝き、すぐに向き直す。
既に白いコートの男の姿は何処にもない。
そこに居たのは―――金色の狼だった。
月光の届かない夜の公園を異質な光に満ち溢れる。
暗い闇をも照らす金色の光を放つ鎧。狼を模した兜には剥き出しの鋭い牙、そして異形の者達を射抜くその緑眼は目の前に佇むホラーを威圧する。
――その名も黄金騎士ガロ。
――ガシャリ――ガシャリ、と鎧を身に纏ったガロの重厚な足音が響き渡る。同時に゙轟゙と低く重い咆哮がホラーを威嚇するようにガロから放たれた。
その足音はホラーに対する死のカウントダウンを意味する。
左手に持つ金色の鞘から剣を引き抜く。
先程の直刀両刃、鍔無しの魔戒剣とは異なり、刃は厚く、刀身には波打つ紋様、三日月の反り返ったような鍔、柄にはガロのシンボルマークと言える赤い三角形の紋章が施されている牙狼剣へと姿を変える。
右手に牙狼剣を握り締めホラーを狩るべく前進。
最早、ホラーに黄金騎士から逃れる術はない。
――それからは一瞬の出来事だった。
痺れを切らしたホラーが勢いよく踏み込みガロに掴み掛かり力任せに押し込んでいく。
ホラーの飛び付きを真正面から受け止め数メートル後退するも片足でブレーキを掛け残す。
「おおおぉッ!!」
掴み続けるホラーの腕を払い除け、ガロの重い左拳がホラーの胸に沈む。堪らずホラーは腰が砕けるよう後退するが簡単にはいかない。
ホラーの太く、先の尖った尻尾がガロを貫かんと下から迫りくる―――
金属と金属がぶつかり合う、重く甲高い音が鳴る。
魔獣ホラーの硬い皮膚に覆われた尻尾はガロの黄金の鎧に弾かれ貫くには至らなかった。
――その隙をガロは見逃さない。
仰け反ったホラーとの間合いを瞬時に埋め容赦のない一撃を浴びせた。 流れるような動きで縦から斬り下ろし、後ろに振り向くように―――
―――゙一閃゙。
二つの斬り口を残したホラーは重く、低い断末魔をあげ砕け散るように跡形もなく消滅した。
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