第1話 異変

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ホラーが消滅したのを確認し、牙狼剣を鞘に収め鎧を解除する。 黄金の輝きを放つ鎧が消え、公園はいつもの静けさを取り戻す。 白いコートの男だけがその場に残ったまま。 「――ザルバ」 魔戒剣の収まる赤鞘を白いコート―――【魔法衣】に隠し自身の左手に嵌めた指輪に喋りかける。ザルバばああ゙と一言、そして次の言葉を繋ぐ。 『このホラーにも変わったところは無い。ハズレだ、鋼牙』 ザルバの言葉に゙そうがと返し、明かりの失った暗い公園を歩き出す。 『おい鋼牙、 本当に奴さんはいると思うか? かれこれもう七件目だ』 愚痴にも似たザルバの問い掛けに無言を貫き歩み続ける。 この調子では暫く終わらないだろう――――。 『しかし、あの神官様直々の指令だ。――どう思う、鋼牙』 ザルバの言葉に数日前、元老院での出来事を思い返す―――  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「―――冴島鋼牙、よく来てくれました」 ――元老院。 魔戒騎士や魔戒法師たちの総本山とも言える場所。 その奥の広間に――正確には辺りが暗く広さはよく分からないが――゙一人゙の婦人が佇む。 白いドレスを身に纏い、上品な風貌を持つその女性はおおらかな雰囲気を醸し出している。 「お久しぶりです、グレス様」 グレスと呼ばれた女性に挨拶を交わし一礼。 「それで…用件とは」 「冴島鋼牙、少し変わった質問をします。最近、貴方の周りでなにか変わったことはありませんか?」 神官グレスの質問に最近の出来事を思い浮かべる―――が、特に変わった事はない。強いて言うならば、それはホラーの数。 魔戒騎士の本業はホラーを討伐する事。 だが、それはあくまで仕事の一つでしかない。 魔獣ホラーは陰我のあるオブジェをゲートに魔界から人間世界へとやってくる。 つまり、いくらホラーでも゙通り道゙が必要なのだ。 その通り道こそが陰我の溜まり場である。 魔戒騎士達はその原因となる゙エレメンドの浄化を行い、溜まった陰我を消滅させる。 昼にエレメントの浄化、夜にはホラー狩り。 ―――それが魔戒騎士の一日である。
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