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倒れ込む男達を尻目に豹変する女性、そして謎の男に姿のない声―――
次々に起こる出来事に男は頭が追いつかない。 一体、何が起きているのか――。
『おい鋼牙、このままじゃ――』
「分かっている」
白いコートの男、鋼牙は一歩、さらに一歩と女性に近づいていく。 その場に呆然と立ち尽くす男を横切ろうとした時だった。
突如、女性が片手で持ち上げていた男を鋼牙目掛け投げつける。
突然の行動にも慌てることなく、投げられた男を受け止める。
女性は舌打ちしつつ、倒れている男の足首を掴もうと手を伸ばす。
――が、その手は鋼牙に阻まれ動きを封じられる。 それどころか女性の顔に容赦なく鋼牙の左拳が打ち込まれ後方に吹っ飛ぶ。
「何をしている、さっさと逃げろ!」
状況を呑み込めず未だに立ち尽くす男に鋼牙が一喝、その言葉で我にかえった男は悲鳴に似た声をあげ仲間を担ぎ逃げていく。
それを横目で完全に消えたのを確認し、女性もといホラーに向き直る。
既に女性は立ち上がり、鋼牙を睨み付けていた。
「――ミヨデヨ、アデヂャナヨツム(人間、何故邪魔をする)」
「貴様らを狩るのが俺の仕事だ」
ホラーの問いに対し吐き捨てるように答え、鋼牙はコートの内側から赤い鞘に収まった剣―――魔戒剣を鞘から抜き、左手を前に突き出し、刃をその上に乗せ構えた。
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