井馬福同盟

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クラスの内村さんが防具を先生から受け取った。 「先生……初心者に手加減なしなんて……」 彼女は剣道部で、みんなに竹刀の握り方や防具の付け方を教えていた。 「すまん。ついな、突きが来たからびっくりして……」 「……でも、私も初心者には見えなかったな。さすが!初代沖田総司」 内村さんは笑って、手を貸して立たせてくれた。 シャンプーのいい香りがする。 「保健室行ってきます!」 体育館を出ると、体力テスト用の道具の入ったかごを持った前の席の男子と鉢合わせた。 あのメールをもらってから話してない。 「ザッキー!体育係りだった?」 ざっきー? 変わった名前だな……いや本名じゃないか 「内村……福田さんどうしたの?」 「先生が手加減なしで怪我させた。バカじゃないの?ねえ!」 ねえと言われて、困って笑っておいた。 「大丈夫?」 ザッキー君にうんとうなずいた。 「じゃあね。早く保健室行こう」 保健室で湿布を貼られた。 痛みが引かないようなら病院でレントゲンを撮るようにと、お母さんと同じ歳くらいの先生が話している。 私は上の空で、雲一つない空を窓越しに見ていた。 「布団……干したかったな……」 先生も、窓を見上げて 「本当ね。今日が休みの日なら良かったのに。梅雨の中休みね」 夢の中のことなのに………… しかし、あの布団は臭かった。 あり得ない匂いがした………… 椅子から立ち上がってお礼を言った。 体育館へ戻りながら、痛む肩を押さえた。 やっぱり私は斬られて死んだのかな? 馬越さんは斬られなかったよね…… 「………………ああっ!夢なのに!」 気になってしようがない…… 「…………福田、もういいのか?」 「!?」 芹沢局長の問に聞こえて顔を上げた。
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