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「チヤちゃんは、誓わなくていいよ」
北森さんがくすっと笑いながら言った。
「俺たちの大好きな岬と、できるだけ一緒にいてやって。それだけで、岬は幸せで、俺たちも皆幸せになれるから。お願い」
俺はしっかりと頷く。
すると、北森さんは嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は普段のような優雅なものではなく、どものような笑顔で、香那のそれと重なって見えた。
「では、誓いのキスを」
北森さんはそう言った。
キ、キス……!?
いやいやいや、待った待った……っ!
「待っ……!」
しかし俺の気持ちなど無視するかのように、よっしゃあ待ってましたあ! と周囲から叫び声が上がる。キャンドルが灯る幻想的な雰囲気が一瞬で台無しだ。村井さんがなぜか胴上げされるのが見えた。
「チヤちゃん、好きだよ」
その喧噪中、俺にしか聞こえない小さな声で、岬さんは言った。
「今日いっぱい聞きました」
俺も小さな声で返す。
すると、だよねー、ああ恥ずかしい! と岬さんは少し赤くなった。「しかも篠木と付き合ってなかったなんて!」と悶えている。俺カッコ悪りぃ、と。
──不思議だ。カッコ悪い岬さんが、今までで一番愛しく見える。
「俺も……、大好きだよ、灯和」
初めて紡ぐ愛の言葉は恥ずかしくて、でも伝えられた満足感に心が満たされる。ますます赤くなった岬さんに、俺から背伸びをして唇を重ねた。
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