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──香那──
「どーも」
僕が片手を上げて挨拶すると、その場で先輩は深く頭を下げた。
屋上の馬鹿騒ぎを背に、扉を閉めて篠木先輩と向き合う。
今回梓から岬のことを聞いたとき、すぐにおかしいと思った。篠木先輩は人見知りが激しいし、小心者で臆病だから、そんな出会って数週間で千夜と付き合うなんてこと、絶対に起きないと思ったから。どうせ夏夜がなんかしたんだろうと思いつつも、それならそれで岬と千夜のために乗ってやろうと思ったのだ。
「げ、元気、か……?」
僕を前にして緊張してすぐどもるのは相変わらずだ。
「ええ。先輩もあれから大学入れるまで勉強したそうで」
「黒木は、やっぱり、すごいな。夏夜君と同じ大学なんて」
「もちろん。僕は頭の出来が違いますから」
まあ、死ぬ気で勉強したけどな。
「僕に会いたかったんでしょう? なんですか?」
我ながら他に言いようはないものかと思ったが、しょうがない。この人と対峙する上で、気を遣う余裕なんてない。全く、トラウマってもんは厄介だ。
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