episode.2

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episode.2 「また一人、行方不明者…か。」 刑事のイトダは、新聞を開きながらため息をついた。 この一ヶ月、都内では謎の失踪事件が相次いでいた。 行方不明者は、計50名に上るという異常な事態だ。 特に奇怪な事件として、ホテルのパーティー会場からものの数分にして30名が消えるというものがあった。 警察は、大きな犯罪グループによる連続誘拐事件の方向で捜査を進めている。 イトダもその捜査を担う一人だ。 現在、とある人物を待っている。 日曜日の正午だというのに、この喫茶店はほとんど客がいない。 まあ、ひと気のない方が好都合か。 「イトダ刑事さん…でしょうか?」 声の主に気付くと、イトダは席を立ち礼をした。 「お忙しいところ、お呼びだてしまして申し訳ありません。」 「いえ。何かお役に立てると良いのですけれど。」 「おじちゃん、こんにちは。」 女性の後ろから小さい女の子が顔を出した。 「こんにちは。」 彼女らは、姉妹だ。姉の名は ホシカゲ ミツキ、歳の離れた妹は イツキという。 例の30名が消失した現場で、唯一その場に残っていたのがこの二人。 助かった・・・と言えば聞こえは良いが、つまりは重要参考人である。 「早速で恐縮ですが、事件当日のことを詳しくお聞きしても良いでしょうか。」 「はい。到底信じてもらえるようなお話しではないのですが・・・。お話しします。」 難しい話は大人にまかせ、イツキはイトダがご馳走してくれたチョコレートパフェに夢中だ。 「あの日は友人の結婚式でした。」 ミツキが話しはじめた。 「あの時、打ち上げ花火を見るために、皆が天井を見上げていました。」 「ちょっとすみません、室内で打ち上げ花火ですか?」 「はい。あの広間は特別で、天井全体が天窓になっていんるです。花火はそこから見てました。」 なんとも贅沢だ。 「そして・・・、ここからが不思議ですが、突風が吹いて地鳴りが聞こえました。」 「室内で突風ですか・・・。」 さすがにあの広間は特別で・・・とは続かなかった。 「気付いたら皆さん消えていました。私とこの子を除いて・・・。」 到底信じられない話だ。
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