第1章

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 私が起動した教会ステージへと向かうため空の彼方へと去り行く赤と白の戦闘機を見送り、やっと緊張していた全身の力が抜けるのを感じた。  彼女に少しは心配をかけずに気丈な姿でいられただろうか? 「きっとばれてたわね」  独り言が口をつき、自嘲気味に笑いが溢れた。  インプラントのあらゆる部品などが身体のあちこちから露になり、誰の目から見ても私がもう先がないことは明らかだ。  大きく息を吐くと、痛覚はカットしてあるはずなのに痛みを感じて呻き声が漏れる。  じっと耐えていると少し治まったような気がして、もう一度空を見上げてVFの影を探したがもう私の目には捉えることが出来なかったが、あの子の歌声が聴こえていたので耳を澄ます。  今の身体の状態で歌うのはかなり酷だとは私も充分理解しているが、辛いからこそ歌ってほしかった。  フォールドソングは歌い手の感情が高まれば高まるほど力を得て、広く強力な効果を発揮する。  あの子が生き残るためには、バジュラたちと共にギャラクシーを打ち倒し、治療に専念するしかない。  ここに来る前に、クォーターとあの小さな科学者にエティアの今までの経緯と研究データを送信しておいた。
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