第1章

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 私の研究データを元に、V型感染症の治療に取り組んでくれるだろう。  そう、リトル・クィーンが生き残ってくれればあの子は生き延びれるはずなのだ。  以前、リトル・クィーンの内臓移植の話を切り出したが、彼女の血を輸血することでも感染症を抑えることが出来ると思われるが、そこまでのデータが揃わなかったので、あとは彼らに託すことにした。  生きて、生き延びて、幸せになって―――  それだけが、今の私の願いだ。  V型感染症を植え付けておきながらこんなことを思うのは偽善かもしれないが、彼らに託したのもせめてもの罪滅ぼし。  だから、本当は伝えたかったことも言わずにステージへと向かわせた。 「愛してるわ、エティア」  別れ際に言えなかった言葉を呟いた。  バジュラクィーンと融合したバトルギャラクシーを見て、喉の奥からククッと笑いが漏れる。  奴らの野望など達成するはずがないのだ。  綿密に計算された計画であっても、小さな綻びで全てはダメになる。  リトル・クィーンを手中に納められず、私が道具であるはずのフェアリー9を、エティアを一人の人間として愛してしまった時点で計画は狂ってきていたのだ。  だからこそ、全てを壊して欲しかった。  私たちのせいで投獄され、感染症の影響で苦しくて辛いはずなのに、抱き締めてくれた。  嬉しくて幸せで、つい言いそうになったけれど、その言葉を口にしたらきっとあの子は立ち止まってしまう。  私が完全に動かなくなるまで抱き締めてくれただろう。  その後、彼女はどうなる?  歌わなければ戦いが長引き、エティアが生き残る確率はグッと低くなる。  命を削ることでもあるが、歌で生き延びてくれる方に賭けた。
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