第1章

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 目を閉じると、エティアのいろんな表情が瞼の裏に浮かぶ。  歌っている顔、照れている顔、真剣な顔、悲しそうな顔、すました顔、怒っている顔、そして――― 『グレイス!』  私に向けられた満面の笑顔。  私の一番好きな彼女の顔で、私の視聴データの中でも一番蓄積されている表情だろう。  彼女の笑顔を思い出していたら、私も自然と口元が緩んでいた。  あの子の歌声が聴こえていて、目を閉じれば彼女の姿が浮かぶ。  なんて素敵なことだろう。  ふと、ランシェがかつて言っていた言葉が頭に響いた。 『―――愛とは花なのよ』  自身の膝に頭を乗せてスヤスヤと眠る幼い愛娘の碧緑の髪を撫でながら、子守唄を優しく歌っていた。  歌っていた歌は、古い映画の主題歌だという。 『歌詞が凄く素敵でね、私、感動してしまったの。愛は花、あなたはその種って。どんなに苦しい時があったとしても、愛を受けて種は花開く。この子も、この先どんな辛いことがあったとしても私たちが愛情持って支えてあげれば、何だって出来るんじゃないかしら』  そう話ながら笑った彼女を、その時の私は理解が出来なかったが、今はそれが少し分かるような気がする。
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