第2章

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「本当のこと話したら、ちゃんと考えてくれる?」  私が問うと、少しだけ間を置いてから彼女はコクンと頷いた。 「あなたを歌手にしたいのは本当よ。ただ…あなたの身体にあるウィルスを宿したいの。ウィルスはあなたの歌の力を強くしてくれる。もちろん、薬でウィルスと共存するのだけれど、そのウィルスの宿主…キャリアを見つけるのが私の最大の目的。それまでの身代わりね」  あとで『上』から話し過ぎだと文句を言われるかもしれないが、こちらのカードを全部見せなければ彼女は私たちの元へ来ないような気がした。  だが、人体実験の内容を聞いて果たして私の手を取るか、かなり危険な賭けでもある。  両耳に掛けられたイヤリングが目に留まり、師と仰いでいたドクター・マオの顔が浮かんだ。  もちろん、目の前の彼女がドクター・マオの孫だということは調査済みで、だからこそ探していた。  ―――私の研究を認めなかったドクターたちに復讐するために。  ドクターを尊敬していたし、認めてもらいたかった。  けれどそれが叶わないと分かると、私の気持ちは憧れから憎しみへと変わっていった。  ドクターたちが否定してきた研究を、私が彼女の孫であるこの子で成し遂げることが出来たら、こんな素敵なことはないと快感に震えた。   「ここから抜け出せるの?」  先程までとは違って決して大きな声ではないが、凛としたしっかりとした声で問われて我に返った。 「ええ、そうよ。あなたが望むことの大抵のことは叶えてあげられる」  もう一度手を差し出すと、ゆっくりと彼女が私の前までやって来た。 「あなたと行く。ここに居てもただ死を待つだけ。それならあなたと一緒に行っても同じだもの」 「そうね、これからよろしくね、私はグレイス・オコナーよ」 「…エティア、エティア・ハーツです」  私たちは互いの自己紹介をして握手をし、彼女はギャラクシーと言う名の悪魔と契約を結んだ。
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