第1章

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そこまで覚えていた。気がつくと、深夜だった。眠ってしまったようだ。いつもの僕なら寝れば嫌なことを覚えていてもすっきりとするのだが、今回のことは、忘れられなかった。寝る前と、全く同じ精神状態だった。。 とても怖い夢を見た。僕の頭に残っている夢。それは、僕が眠る前に苦しんでいたとき、突然停電になるというものだった。 町の防災無線から、停電したという放送が流れた。僕は、懐中電灯を取りに一階に行き、本当ならばあるはずのない部屋に入った。そこで懐中電灯を手に持ち、点けてみると、和也の真っ白な死体の顔が僕の目の前にぬっと照らし出された、というものだ。 その和也の表情を僕は鮮明に覚えている。目をぎょろっと剥き、上から覗き込むようにして僕の顔を見つめていた。息ができず、僕の一生をどうしてくれるのだと言わんばかりの表情だった。 思い出しただけでぞっとした。僕の体は震えだした。和也のところへ今すぐ行って、謝りたいと思った。しかし、許してくれるだろうか。僕は怖くなり、なるべく考えないようにして、布団をかぶった。寝つくまでには、そうとう時間がかかった。      7 あの時は、冷静に周りの目になることができなかったな。僕は、感覚的で、主観しか持てないような人間だった。人の気持ちになることができない人間だった。だから、あんなことをしてしまったのか。 僕が嫌な夢を見た日から一ヶ月が経った。僕は、相変わらず自分を責めていた。ぎくしゃく、疎遠、それから手の包帯。止めようと思えば、僕は止められていたはずだ。そんなことが頭の中でぐるぐるとまわっていた。 補欠合格は、合格になった。学校では、やっと受験戦争の殺伐とした雰囲気が抜けてきて、もとの平和で皆仲良しなクラスに戻ってきていた。 僕は、卒業旅行として、スキーに行かないか、などと誘われたが、とてもそんな気分ではなかった。 おそらく、ため息を吐き、下を向いて、黙って席に座っている僕だけが、教室で浮いていただろう。 僕は、学校からの帰り道を、一人で歩いていた。和也の涙を見たあの日から、僕はだめになっていた。 家に帰り、自分の部屋の中で横になった。また、平均睡眠時間の二倍も寝るのだろうか。そんな自分に嫌気がさしてくる。僕は、一人で悶々としている。
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