第1章

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その一言は完全に嘘だとわかった。心がこもっていなかった。しかし、その一言に僕は何も言い返せなかった。そこで、僕の心は不完全燃焼し、灰色の煙が上がった。煙は、自分のことで精一杯だった僕を苦しめた。それから、会話はぎくしゃくし、ついに僕達は、疎遠の道を辿って行った。和也は、それから塾をやめた。一緒に大学まで行こうと決めていた合格発表も見に行かなかった。そして、僕が滑り止めになんとか補欠合格してから数日経ってからだった。たまたま和也の家の近くを歩いていると、和也がぼーっと立っていた。虚空を見上げるようにして。         5 僕は、和也に声をかけようとゆっくりと近づいていった。和也には、もう包帯もくまも、無いようだった。 和也ならきっといい大学に行けただろうと思った。悔しいが、やはり幼い頃からの思い出が、僕を動かした。和也へと引きつけられるようだったと言ってもよい。しかし、やはり何か怖かった。いつものように話しかけられないということは、なんとなくわかった。 「和也」 僕は、疑問形で話しかけた。ぼーっと虚空を見上げて立っていたいた和也は、 「おう、智樹か」 と、僕の方を向いて、なんともそっけない返事をした。いや、疎遠になっていたのだから、このようなものか。そう思った。あきらめるしかなかった。和也の方もまた、僕を遠ざけていたか、僕の心をなんとなく察していたのだろうか。僕もまた、そっけなく聞く。本当は疎遠になる前にすぐにでも戻りたいのだが。 「元気してた」 すると和也は、一瞬下を向いてから、 「うん、まあまあね」 と、言った。あの夢の中での話しのような雰囲気は無かった。お互いが、お互いを探っているような感じだった。僕は、必死で話題を探して言う。 「寒くなったな」 「うん、体の方はどうだ」 「大丈夫だよ」 それから、しばらく間があった。田舎の広いだけの道路が、まるで眠っているかのように僕と智樹の前に横たわっている。 このような雰囲気が嫌になり、僕は少し元気のある声を出した。「高校、楽しかったか」 「うん」 しかし、和也の声は、動かない。そして、また沈黙。あんなに仲が良かったのに。あんなに楽しい日々を一緒に過ごしたのに。このような状態になってしまうなんて。 「智樹、絵の方は描き始めたのか」
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