15/15
7557人が本棚に入れています
本棚に追加
/867ページ
「手を合わせて下さい。」 「出た、級長。」 二人でニヤニヤ笑いながら昼間のやり取りを繰り返して、夕飯を食べた。 私が、真っ先に課長がキレイにハート型に成形したハンバーグの真ん中を真っ二つに割ったら、課長が怒ったのが面白かった。 「うわっ、俺とみゅーの愛の結晶がっ!!!」 「ぶはっ、愛の結晶とかってよくそんな寒いセリフをポンポンと吐けますね、はははっ。」 「ちっ、お前が面白いから負けてられねーだろ。」 「意味分からないですってば。もっと大人な付き合いをするもんだとばかり思ってましたよ、三十路の恋愛って。ふふふっ。」 ぱっくりと割ったハンバーグを口に放り込んだ。 「おっ、じゃぁ、今夜も泊まってけよ。たっぷり大人の付き合いしようぜ。」 「帰ります。明日、用事がありますから。用事がなくても帰ります。」 「ちっ。みゅーと一緒に寝てぇ。」 私は激しく遠慮だ。 心臓が飛び出すくらいにドキドキして、寝られないに違いない。 「まぁ、そのうちですね。」 「そっか、金曜日、飲みに行くか?」 「飲みません。」 「ちっ、酔っ払わせてぇ。あっ、みゅー、酒でも飲むか?」 「飲みませんってば。」 「だよなー。俺だってみゅーの初めてを酔った勢いとかヤダし。」 「ゴフッ。」 さりげなく、変態なことを言う課長に激しく動揺してむせてしまった。 一緒にいると、楽しいし、ドキドキするし、好きだと思うけど、こういう瞬間に、どうしようもない気持ちになる。 温度差とか溝とか。 私の気持ちがそこまでいってないことくらい、分かってるって言ってたくせにとかって。
/867ページ

最初のコメントを投稿しよう!