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「手を合わせて下さい。」
「出た、級長。」
二人でニヤニヤ笑いながら昼間のやり取りを繰り返して、夕飯を食べた。
私が、真っ先に課長がキレイにハート型に成形したハンバーグの真ん中を真っ二つに割ったら、課長が怒ったのが面白かった。
「うわっ、俺とみゅーの愛の結晶がっ!!!」
「ぶはっ、愛の結晶とかってよくそんな寒いセリフをポンポンと吐けますね、はははっ。」
「ちっ、お前が面白いから負けてられねーだろ。」
「意味分からないですってば。もっと大人な付き合いをするもんだとばかり思ってましたよ、三十路の恋愛って。ふふふっ。」
ぱっくりと割ったハンバーグを口に放り込んだ。
「おっ、じゃぁ、今夜も泊まってけよ。たっぷり大人の付き合いしようぜ。」
「帰ります。明日、用事がありますから。用事がなくても帰ります。」
「ちっ。みゅーと一緒に寝てぇ。」
私は激しく遠慮だ。
心臓が飛び出すくらいにドキドキして、寝られないに違いない。
「まぁ、そのうちですね。」
「そっか、金曜日、飲みに行くか?」
「飲みません。」
「ちっ、酔っ払わせてぇ。あっ、みゅー、酒でも飲むか?」
「飲みませんってば。」
「だよなー。俺だってみゅーの初めてを酔った勢いとかヤダし。」
「ゴフッ。」
さりげなく、変態なことを言う課長に激しく動揺してむせてしまった。
一緒にいると、楽しいし、ドキドキするし、好きだと思うけど、こういう瞬間に、どうしようもない気持ちになる。
温度差とか溝とか。
私の気持ちがそこまでいってないことくらい、分かってるって言ってたくせにとかって。
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