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係長と水谷君が来てる。
二人の間にコソコソ、カサカサ。
黒光りする気持ちの悪い生き物にも負けないくらいにカサカサコソコソと二人に近付く。
小さい声で、二人に声をかけた。
「おはようございます。」
振り返った水谷君は私が何も言わないうちから笑ってくる。
係長はさすが、水谷君よりも大人だ。
そんな失礼なことはしない。
「ええと、金曜日はとんだ醜態をお見せしてしまったようで」
「ぶはっ。」
話の途中なのに噴き出した水谷君を一睨み。
「色々と申し訳ございませんでした。」
おもに係長にペコペコ。
「いいよいいよ、全然申し訳ないことになんてなってないから、ねっ、水谷君。」
にこやかな笑顔と一緒に水谷君に同意を求める係長は大人だけれども。
「係長、何、優等生ぶってんすか。さっきまで、腹筋が捩れるほど笑って筋肉痛になるかと思ったとか言ってたじゃないっすか!!!」
・・・係長を見たら、我慢してる。
絶対に笑うのを我慢してる顔。
「新藤さん、面白すぎたんすよ。今度、一緒に飲みに行きましょうね!!!」
水谷君に誘われるけれども。
「ない、永久にない。」
答えて、自席に戻った。
うん、一応、謝りたい人リストの中の人達には謝ったぞ。
「おはようございます。」
いつもよりも、ちょっと元気な声でやって来た近藤君。
近藤君は、あの時、いなかったはずだからいいや。
「おはよー。」
普通に、朝の挨拶をしたら、こっちをモゾモゾと見てくる。
いつもと違う感じ?
「新藤さん、新藤さん。」
すっごく、コソコソって感じだし、私も近藤君にならって小さな声で
「何?」
と聞いたら、びっくり仰天。
「金曜日、ありがとうございました。新藤さんが金沢さんのところに行けって言ってくれたおかげで、仲良くなれました。」
弟の勇気と一つしか違わない近藤君に照れた顔して報告されて。
気分は姉だか親戚のおばちゃん。
「ほほほほっ、若いっていいわね~。」
私の一言にウケたのは水谷君で。
「新藤さん、それ、素ですか、わざとですか、どっちでもいいっすけど、俺の腹筋を痛めつけるのは止めて下さい。」
そう言いながら笑い出した。
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