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次の日の朝、外はあいにくの雨模様。
それでも、自分で決めたことだし、ほんのちょっぴり体重が減っていたことに気をよくして名古屋の一つ前の駅で降りた。
雨降りだし、課長はいないかもしれないなって思いながら階段を降りたら、改札を出た壁のところにいた。
思わず、顔が緩んだと思う。
いないかなと思っていただけに、いたときの嬉しさ。
ちょっとドキドキしながら声をかけた。
「おはようございます。」
「おう、おはよ。雨だしどうするかと思ったけど、待ってて良かったな。」
課長らしくない優しい声にドキドキが増えていく。
一緒に駅から出て傘をさそうとしたら、傘を奪われた・・・。
まさか・・・。
いや、そのまさかを普通にしようとしてる・・・。
ドキドキしないはずがない。
と言うか、痛いアラサーカップルになってしまう。
「課長、傘、返して下さいよ。」
「ヤダ。」
「いや、本当に勘弁して下さい。」
赤身で筋肉質の普通の人よりもガッチリ体型の課長と、白身で脂身が普通の人よりも多めなぽよよんの私。
二人並んで一つの傘の中に入っていたら、窮屈なことこの上ない。
見た目にも痛いでしょ。
しかも、傘、あるなら別々にさせって思うし。
「俺、相合傘、したことないんだよね。みゅーと初めての相合傘、したいんだけどなぁ。」
初めての相合傘。
その初めてという単語にそそられるものがないとは言わない。
女性経験が豊富だろうと推測される課長の、初めてが残っていたのか。
それなら、その初めてになりたいと思う気持ちはある。
でも。
「会社じゃないときに・・・。」
恥ずかしい。
会社じゃないときにしたいなんて、恥ずかしくて言えるはずがない。
相合傘を否定してないとか、うん、恥ずかしい。
渡された傘。
「だよなぁ、濡れて透けたら仕事にならんな。」
チラッと、こっちを見て言われて。
そこかよって思ったり。
自分の着てる服が白い服だったことを確認して、恥ずかしくなったり。
「デートで相合傘してずぶ濡れになって一緒に風呂とか、最高だな。」
課長の妄想が酷くなっていくのを聞いて、課長を無視して傘を広げて歩き出した。
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