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「お前の話を聞いてたら大事なこと言うの忘れるところだった。」
大事なこと?
なんだろう。
「あのさ、金曜日、斉藤の言ってた合コン、行くことになったから。」
「はっ?何で!?やですよ、絶対に嫌ですってば。」
「でも、仕方ねぇだろ。酒井からも頼んでくれよってお願いされてだな。」
「断ればいいじゃないですか。」
「断ったけど、じゃぁ、本人になんとか頼んでまた酔っ払わせようかなとかって言ってくるから心配になるだろ。」
心配って。
そこだけ聞いたら嬉しいけれども。
「もう、絶対に嫌ですよ。課長、あれがお酒だって知ってたんでしょ?昨日、斉藤主任が言ってましたよ、メールのこと!!!」
さっきまで、忘れていたけれど。
済んだことだし、これからは気をつけようと思っていたけれど。
思い出した。
「みゅー、怒るなって。」
「怒ってません。」
「俺のいないところで間違って酒、飲まされたら助けてやれないんだぞ。心配にもなるし。だったら俺の目の届くとこにいて欲しいだろ。」
ドキドキ。
「・・・。狡い。課長、その言い方は狡いですよ。」
「酔っ払ったら責任もって家に連れ帰ってやるから。」
「遠慮します。」
「酔っ払ってなくても、泊まってけばいいだろ。」
「遠慮します。」
「一緒に映画見て、寝ればいいだろ。布団もダブルだし。」
「遠慮します。」
「何もしないって。」
「・・・。」
「キスだけ。」
「・・・。」
キス。
その言葉だけで、ドキドキできるくらい、私は経験がないのに。
簡単に言ってのける課長との温度差を感じなくもない。
簡単に泊まってけとかって言う課長との温度差を感じる。
一緒にいていいって言ってくれるのは嬉しいけれど、課長の気持ちと自分の気持ちに溝を感じるのは、どうしてだろう。
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