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「そしたら、その彼が、私の肩をこう組んで、反対側の手で通行人から見えないように私の顔を隠して唇にちゅっって!!!あぁ、恥ずかしいけど懐かしい。」
若い、そして、ドキドキした。
通行人に見られそうなところで、堂々とキスするその彼氏、凄いよ。
「へぇ・・・。凄いね。うん、恋愛偏差値が高いよ。それに恋愛持久走も早そう。」
「またまた、美由紀姐さんだって素敵じゃないですか。海ですよ、海。わざわざそこまで連れて行ってくれた課長の気持ちが嬉しいじゃないですか。」
指摘されてみれば、確かに、そう、なんだよね。
ははは、他人に言われて、気が付くみたいな。
「で、その彼氏さんとはその後、どうなったの?」
「・・・はははっ。ふられちゃいました。カクカクシカジカです。」
・・・、そっか、なるほど。
痛いほど、イトちゃんの気持ちが分かる。
私だって、課長にいきなりホテルに行こうとか言われたら嫌だと思うし・・・。
それでフラれちゃうなんて、なんか嫌。
「そっか、ごめんね、変なこと聞いちゃって。」
「いえいえ、でもフラれて感謝してますよ。だって、そのおかげで、その、ねぇ。」
なるほど、伝わった。
そうか。
「婚約者さんが最初で良かったってことだよね?」
声を潜めて聞いてみたら、うんうんと頷いてる。
「イトちゃんは大人なんだね。はははっ。」
「いや、美由紀姐さんの勘違いですって。実は、2回しかしたことがないんです。」
顔を真っ赤にしてコソコソと教えてくれる内容にびっくり仰天。
「そ、そ、そうなの?結婚するんでしょ?ねぇ、そういうのも普通?」
「あっ、普通かどうかは、分かりませんけど。その、大事にしてくれてるんだなって思ってます。」
うんうん、そりゃぁ、アナタ、絶対に大事にされてるでしょうよ。
頬を染めるイトちゃんを見ながら心底そう思った。
その後、島田組の活動終了後に島田商会の前までイトちゃんを愛車のスポーツカーで迎えに来ていた恋人さんは、物凄く優しい目をしてイトちゃんを見ていた。
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