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「今週の土曜日、暇か?」
やっと、まともに会話になりそうな言葉がかけられた。
「はい、暇ですよ。」
「泊まりに来るか?」
「遠慮します。」
即答してしまった。
だって、ねぇ。
「・・・何もしないから来いよ。」
何もしないから来いと言われて本当に何もしなかった話なんて聞いたことが・・・あるか。
水谷君は安田さんを連れ帰って、何もしなかったんだっけ。
いや、でも、それは付き合う前の話だし。
「課長には前科がありますから。」
私が寝てしまってるうちに、ファーストキスを奪った人だ。
「ちっ。そっか、俺、信用ないんだな。」
信用がないこともないけれど。
泊まりに行くなら覚悟とかしたうえでじゃないと。
「デートは?デートならいいんだろ?」
デートの響きに心が躍る。
「・・・はい。」
なんか照れる。
ずっと、そんなものとは無縁で生きてきただけに、照れる。
「みゅー、その顔、可愛いぞ。」
耳元に課長の顔が近付いて、甘い声で囁かれたら、ビクンとなっても仕方がない。
ドキドキする。
始まったばかりの恋。
「課長、会社でみゅーって言わないで下さいよ。」
「みゅーは会社以外で俺を課長って言うなよ。つーか、すぐにバレそうだよな。俺、隠しておける自信がない。」
「はははっ。」
隠しておける自信がないなんて。
私も、会社内で隠しておける自信、ないかも。
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