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打ちひしがれる思い。 酒井さんがネックレスを取りに行くのについて行く。 私はいったい、どこに隠したんでしょうか・・・。 酔っ払いめ。 自分だけど、殴ってやりたい。 どんだけ陽気に酔っ払ったら、課長の靴の中に大事な大事なネックレスをしまっちゃったりするんだろう。 自分にガッカリだ。 「どーぞ。」 目の前に垂らされたネックレス。 4月の誕生石のダイヤモンドが光るネックレス。 それを、まさか、課長の靴の中に入れてしまっていたなんて・・・。 オーマイガー。 手にする前に残り香がないか、嗅いでしまった。 「くっせーとかって言うなよ。凹むから。」 へにゃっとした顔をする課長を見て、言いたくなった。 「酸っぱい匂いがしますよ。」 「げっ、マジかよ。」 「ウソです。」 ネックレスを奪って、それから自分の首につけた。 大事なネックレスだ。 「いい趣味、してるな、弟。悔しいけど、似合ってる。」 弟の趣味が褒められたのだと思うけど、似合ってるの言葉にも、ほんわかと温かい気持ちになった。 「へへっ、ありがとうございます。」 「そういう顔、会社ですんなよ。」 ハテ? どんな顔ですかね。 「ココア、飲むんだろ。」 フイッと、行ってしまった課長の顔がちょっと恥ずかしそうだったことは、指摘しないでおこう。 不器用大権現め。
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