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課長がDVDを操作して始まったハリウッド超大作。 私は、見たことがあるやつだし、多分、課長も見たことがありそうだと思う。 それでも、それを見てしまう理由はやっぱり、あのセリフが聞きたいからだと思う。 『これは訓練ではない、繰り返す、これは訓練ではない。』 序盤からアメリカ映画らしい趣向がバッチリと凝らされていて、私としては突っ込みどころが満載だけど。 何で、いつも地球外生命体と闘うのはアメリカなんだろうとか。 世界中の軍隊が連携したとしても、日本は戦っちゃいけないのでは? なんて突っ込みはいらないか。 ほけっと見ていたら、隣から伸びてきた手。 ドキドキするっての。 私の手を握ってこなくていいから。 そういうのは、下手な恋愛モノで映画館でやることだろうと思う。 ドキドキしてくる。 繋がってるのは、握られた手だけなのに、なんでこんな気持ちになるんだろう。 一緒の映画を見ながら、手を繋いだら、手を繋いでる以上の効果がある気がする。 同じモノを見てるわけだし。 「ポップコーンとコーラでも買ってくれば良かったな。」 「ぶはっ、部屋の電気も消して見ないといけなくなりますよ。」 「映画館もいいけど、映画館だとこんなバカな会話できないよな。」 「はははっ。ですね。」 ドキドキしていたはずの課長の手。 ドキドキしていることに変わりはないのに、どこか、それさえも心地よくなったりしていたり。 もうすぐ、あのセリフが聞けそうな感じだ。 いやでも期待に胸が膨らむ。 「もうすぐですよ。」 「ぶっ、お前、言うなよ。」 どうやら、課長もあのセリフが聞きたくてたまらないみたいだ。 キターーーーーー!!! 『これは訓練ではない、繰り返す、これは訓練ではない。』 「くくくっ。」 「ふふふっ。」 絶対に笑う場面ではないのに、二人とも笑ってしまった。 お互いの遠慮がちな笑い声を聞いた後、顔を見合わせて、笑い出した。 「ダメだ、笑える、あははははっ。」 「キタキタキタって感じでしたね、はははははっ。」 映画、そっちのけで笑い出した二人。 笑い転げてるうちに、いつの間にか繋いでいた手が離れていた。
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