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途中から、映画なんてそっちのけで笑ってたせいで、一番いい部分を見てないのに、終わってた。
「終わってますね。」
「だな、でも、まぁいいだろ。夕飯、作ろうぜ。」
さっきまでの甘い空気がウソのように、いつも通り。
「ヒラヒラのエプロン、して見せろよ。」
「却下です。そっちがすればいいじゃないですか。」
「ちっ、さっきの素直なみゅーはどこに行きやがったんだ?」
「・・・さっきのちょっと素敵な人が入っていたけーごさんもいないですね。」
けっこう、頑張った。
自分なりに頑張った。
私を見た課長の顔が、ふわっと笑って。
「バカタレ。」
一言、物凄く甘い声で言われた。
硬直。
魔法にかけられたみたいな感じ。
むず痒い気持ちでいっぱいだ。
「夕飯、作らずに、子供でも作るか?」
あぁ、空耳であって欲しいと思った。
でも、目の前で不敵に笑う顔を見たら、絶対に空耳なんかじゃなかったなと悟った。
「さて、ハンバーグ、作りましょうか。」
さっさと立ち上がって、課長の家の台所に逃げ込んだ。
課長の笑い声が背中から聞こえてきたけれども・・・。
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