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***
待ち合わせは午後5時に星ヶ丘公園前。
悠大は聖人よりも先に行こうと思い、早めに家を出た。
後から行って話し掛けるのがなんか恥ずかしいからだ。
だが、悠大が公園に着いたとき、すでに聖人が待っていた。
聖人はまだ悠大に気づいていない。
はぁー…っと深呼吸をして悠大は聖人のところへ向かって行く。
「聖人!ごめん、待たせたか?」
「大丈夫だよ。僕がちょっと早く来すぎただけだから。」
時刻は午後4時40分。たしかに早い。
「え、なになに?聖人も楽しみにしてたとか?」
「うん。すごい楽しみにしてた。」
そう言って聖人は照れながら笑っている。
その顔は反則だろ…
不意をつかれた悠大は自分が投げかけた冗談に後悔していた。
***
屋台が立ち並ぶ中、二人は何のあてもなく歩いていた。
まだ空が明るい。
この時間帯は家族連れが多く、おそらく同級生には会わないだろう。
今は同級生に会いたくない、この時間を邪魔されたくない。
悠大はぼんやりとそんなことを考えていた。
「何か食べたいものとかある?」
「うーん…じゃあ、あれが食べたい!」
そう言って聖人はきゅうりの一本漬けを指差した。
「おう、ずいぶん渋いんだな…」
「まあね。じゃあ買いに行こ。」
きゅうりの一本漬けを2本買う。
悠大は一瞬で食べ終わる。
聖人の方へ目をやると苦い表情をしている。
「どうした?大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫…っう、ごほっ…」
うわ…なんかエロ…
あーもう!そうじゃなくて!!!
と悠大は慌てて聖人の背中をさする。
「おいおい、大丈夫じゃないだろ。」
「ごめん…実はきゅうり苦手で…」
「はぁ!?じゃあなんで食べようとしたんだよ?」
「なんか悠大といたら何でもできそうな気がして…」
「な、なに言ってんだよ?!」
「分かんないけどそう思えたから。でもやっぱ食べれなかった…悠大食べてくれる?」
え、なになに。計算なの?天然なの?
このままだと…か、か、間接キス…に…
って、そんな深く考えるものじゃないだろ!!
悠大は自分に喝を入れ、冷静になるよう努める。
「仕方ないな。ほら、貸して。」
「ごめん、ありがとう。」
あれ?俺なんであんなに動揺してたんだろ?
悠大は自分の気持ちに自覚がないようだ。
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