壱:そして、第二の目撃者

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「とおりゃんせって童歌があるだろ。 行きはよいよい帰りはこわいとか言うアレな。 あの意味を読解するってんで色々と難解なこじつけをして、やれ神隠しだとか、やれ天神様のたたりだとか、果ては神様へ子供を供物として捧げる歌だなんて説まで出てくる始末。 おお、怖い怖い。 例えば、今流行りのJポップなんかに何十年後、そんなわけのわからない意味合いを持たせるかっていう話だよ。 当然の如く答えはノーさ。 とかく日本人ってのは物事に意味合いを持たせたがる種族だよ。挙げ句、物にも神が宿るんだとのたまう。それはそれは素晴らしい人種だよ。 八百万の神なんて言うけれど、八百万もいるのかよ、神様がって話だ。そいつらが一斉に神隠しなんてしやがったら、そりゃもう少子化どころの騒ぎじゃないだろうさ。 ところがどっこい、この国には数多くの輝ける未来を背負った子供たちがランドセルかるって走り回ってる。 要するに、あの歌は何のことはない、そのままの意味ってこった。 真っ当な意味づけなんて無意味だよ、ナンセンスだよ。 一歩足を踏み入れたは良いが怖くて戻れない人のことを歌った歌なの。今の俺みたいにね」
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