世にも奇妙な五月病

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「五月病割引?」 「はいっ!医師の診断書をご持参の方はこちらの大型テレビ、3割引させて頂いてます!」  3割も安くなるなら利用しない手はない。去年はボーナス少なくて女房に迷惑もかけたしな。でも五月病に診断書なんて出るのか?  いや、それよりも俺は五月病や鬱病といった物に縁がない。つい最近だって『悩み事とか無さそうですよね~』なんて言われたばかりだ。これは明らかに皮肉だ。  もしや今が人生初の五月病になるチャンスなのか?見てろよ。俺だって五月病くらいなってやるさ。 【五月病。新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状の総称】  なるほど。まずは環境を変える必要があるな。そういえば課長が新しい支店の転勤希望者を探していたな。では早速相談だ。 「そうか!異動の件、考えてくれたか!今リンポポ川支店に連絡を――」  何かが違う。転勤になったらあの店に買いに行けないじゃないか。そもそもリンポポ川ってどこだ?  転勤は結局断った。課長には申し訳ないがリンポポ川なんてどこの国に連れてかれるやら……。やはり俺に五月病は無理なのか? 「……はぁ」  自分のデスクに戻り、思わずため息も出る。 「五月病ですか?」  ……おまえ今なんて言った?俺は五月病になれたのか? 「……そうだ。そうだよ!俺、五月病なんだ!元気出なくてさぁ!ハッハッハッ!」 「ってそんな訳ないですよねぇ?元気だけが取り柄みたいな人なのに!」  ちょっと待て。今いい感じだったのになんでそうなる。さりげなく酷い事も言わなかったか?  どうやら俺は五月病になれないようだ。いろいろ試してはみたがもう六月になってしまった。  まあいいか。定価でも他の店より安かった。ああ、あった。まだ売り切れてなくて良かった。ん? また割引セールやってるのか。 「恋患い割引ただいま実施中で~す!」
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