1章 私の夢

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だから私も度々違う具材を入れて作っては「今日は関西風」だなんて1人呟いた。  お兄ちゃん、私沢山料理を覚えたよ。 今じゃお兄ちゃんよりも沢山の調味料を使って、いろんな味の夜ご飯を作れるよ。 醤油味ばっかりで自分で「これ昨日も食べた気がする」なんて言わなくてもいいよ。 私が美味しいご飯を振る舞ってあげるから、だからお願い、映画やアニメみたいにちょっとの間だけ私の前に現れて。 そしたら一回だけでいいからお好み焼きを作って欲しい。 どんなに食べ飽きた味だったとしても、私笑顔で絶対言うから。 「お兄ちゃと一緒に食べられれば、何だって美味しいよ」って。 それが当たり前だったから少し文句も言ったけど、だって、分からないじゃない。 1人になった悲しみや孤独は、1人にならないと分からないじゃない。 あの頃お兄ちゃんついた悪態も、我儘言って困らせた事も、少し喧嘩して何日か口を聞かなかった事も、お兄ちゃんの大事にしていた彼女さんに貰ったキーホルダーを壊した事も、全部全部謝まるから。 だから、やっぱり1日だけでいいから、一時間でもいいから、もう一度だけ、会いたいな。  お好み焼きを食べ終えると多少空腹は満たされ、他に何か作る気にはなれなかった。 ようやくリビングの電気を点け、ソファーで横になってテレビを点けると、世界中で起こっている悲しみの映像が映る。 ぼーっとそれを眺めていると、ドアの開く音と共に「あかりー。ただいまー」とお母さんの声が玄関から聞こえてくる。 それに「おかえりー」と返し、気怠い体をゆっくりと起こした。 「ご飯ちゃんと食べた?」
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