1章 私の夢

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それがやけに心地良かった。 少しの間その場でぼーっとに立ち尽くしてから、また足を進めた。  やっと家に着いてドアノブを回す。 鈍く金具の音が鳴り、ノブが途中で止まる。 鍵が掛かったままなのは分かっていた。 数年前の記憶が蘇り胸が締め付けられた。 「おかえり、月」 あの頃は玄関を開ければ毎日のようにお兄ちゃんが迎えてくれた。 リビングに行けば明かりが点いていて、部屋が暖かかった。 夜ご飯がテーブルに並べられていて、「今日はどうだった?」って聞くお兄ちゃんと優しい会話をする。 「はあ……」 長い溜め息を吐いてソファーに体を寝かせる。 暗いままでいい、電気を点けるのも面倒臭い。 寒いままでいい、エアコンもいらない。 学校でほとんど体を動かさなかったのに、不思議と眠たい。 薄暗い部屋に窓から差し込む月の明かりをぼーっと眺めていると、いつの間にか眠ってしまった。  「はあ……」 また、長い息を吐いて目を開ける。
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