0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
それがやけに心地良かった。
少しの間その場でぼーっとに立ち尽くしてから、また足を進めた。
やっと家に着いてドアノブを回す。
鈍く金具の音が鳴り、ノブが途中で止まる。
鍵が掛かったままなのは分かっていた。
数年前の記憶が蘇り胸が締め付けられた。
「おかえり、月」
あの頃は玄関を開ければ毎日のようにお兄ちゃんが迎えてくれた。
リビングに行けば明かりが点いていて、部屋が暖かかった。
夜ご飯がテーブルに並べられていて、「今日はどうだった?」って聞くお兄ちゃんと優しい会話をする。
「はあ……」
長い溜め息を吐いてソファーに体を寝かせる。
暗いままでいい、電気を点けるのも面倒臭い。
寒いままでいい、エアコンもいらない。
学校でほとんど体を動かさなかったのに、不思議と眠たい。
薄暗い部屋に窓から差し込む月の明かりをぼーっと眺めていると、いつの間にか眠ってしまった。
「はあ……」
また、長い息を吐いて目を開ける。
最初のコメントを投稿しよう!