前編

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 わたしの朝はいつも「おはよう」から始まる。  目が覚めて、一番最初に自分の右手に「おはよう」って言う。そうして左手にも同じように「おはよう」って言ったら、ベッドから降りる前に両足に「おはよう」って言う。  それからわたしはいつもと同じように、白い部屋の隅に置かれた白いタンスの元まで歩み寄る。 「タンスさん、おはよう」  そう言って、わたしはタンスの引き出しを開ける。中から十二本のクレヨンが入った箱と、表紙の無いスケッチブックを取り出す。 「おはよう、みんな」  十二本の白いクレヨンに向かって、わたしは一本一本あいさつしていく。  そうして一通りあいさつが済んだら、その内の一本を手に取り、真っ白な画用紙にクレヨンを走らせていく。  そんな感じで、わたしの部屋はすべてが白でできている。  今こうして座っているソファも、スケッチブックを広げてる机も、すべてが真っ白だ。  見渡す限り純白なわたしの部屋だけれど、この部屋には少しだけ色のある物がある。
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