前編

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 あれは何だろう?  わたしが朝起きて、右手におはようって言おうとした時、わたしはうっかりそれと目があってしまった。  天井の四角の向こうに誰かがいたのだ。  するとその人は、透き通った四角い蓋を開けて、そこから覗き込むようにしてわたしに声をかけてきた。 「ごめんね、起こしちゃったかな? 今そっちに行くね」  そう言って、その人は高い天井から飛び降りてきた。地に足を付く直前、その人の背中に真っ白で大きな翼が見えたような気がした。  その人は、光輝いて見える真っ白な髪に、あの四角の向こう側に見える色と同じ目の色をしていた。  わたしは突然の出来事に加えて、綺麗なその色具合に見とれてしまった。  人を呼ぶことも忘れて、慌てふためくこともなく、ただジッとその人を見つめていた。  そしたらね、その人はベッドのところまで歩いてきて、手を差し出しながら優しそうな笑顔を浮かべてわたしにこう言ってきたの。 「やぁ、お姫様。初めまして。僕は君の願いをなんでも叶えてあげるよ」  …………  ……。
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