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「ちょ、川なんか入ったら風邪ひくわよ」
私は慌てて止める。河瀬くんが風邪をひいたら悪いという理由もあったが、なにより一人は心細かったからだ。
「いえ、大丈夫です。 時間になりましたら迎えにいきますので。 それまでごゆっくり」
再度、お辞儀をする河瀬くん。河瀬くんという先導が居なくなったにも関わらず、船は先ほどと同じスピードで川の真ん中に立つ人のもとへと進んでゆく。ぶつかりそうと思ったとき、その人の正体に気がついた。私が逢いたくて逢いたくて仕方が無かった相田聡その人だ。彼の前で、船は何事もないかのように一人でに停止する。
「聡……」
緊張のあまり、上擦って掠れてしまったが、恋人の名前を呼んだ。
「久しぶりだな愛。と言っても3日ぶりか」
彼は二カッと笑う。生前と変わりない屈託の無い笑み。
私は、彼の笑った顔が好きだった。
普段は年相応に大人びた表情をした彼が、無邪気そうに笑う。そんな一面に私は惹かれていた。
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