#4 幕開け

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大観衆のかき立てる声援と マーヴェラスの一体となったサウンドが この広い体育館から……はち切れそうなほど響き渡る…… 私は思わずイスから立ち上がるほど 窓ガラスの向こう側に……くぎ付けになってしまった…… すごい……すごいよ…… 前の三年生のバンドなんて目じゃないよ……! 初めてステージのスピーカーから溢れ出すバンドサウンド…… いつもの部室のアンプから流れる爆音は ホール専用に取り付けられたスピーカーを抜け さらなる轟音となって体育館中を駆け巡った――――! 初めての大音量で体感するステージに 私の身体は震えが止まらず、思わず涙があふれる…… ユータの刻むビート……バスドラム……スネアの音…… まるで激しく脈を打つ鼓動のよう…… これはユータの……魂の鼓動……なんだ…… ユータの汗が飛び散るたび…… 両の手がシンバルへ……フロアタムへ…… 千手観音の如く……空間を切り裂くたび…… 私の瞳から……ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた…… ユータがカッコいいのは……そう…… どんなことにも……一生懸命で…… 自分の「これだ」って決めたことには 一途なほどに、突き進んでしまう そんな少年のような……輝いた気持ちがあるからなんだ……! 音楽って…すごい…… 想う気持ちって……本当にすごい…… 類を見ない感動に心を打たれた私だったけど その後……ユータが私にくれた……かけがえのないプレゼント…… 今日のステージはなにより そのプレゼントが……私にとっての……全てとなった……
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