#3 アツシ

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「でも……今でも信じられないですよ……  A'zNAILのアツシさんに俺たちの……  マーヴェラスのライブを観てもらえるなんて……!」 ヒサシが興奮ぎみに言う。 「お前らの演奏能力には  前から目をつけていたからな……  そこに実力派ディーヴァ(歌姫)が加入したってうなら  見過ごすことは出来ないだろう……」 A'zNAILの解散後…… アツシはプレイヤーから一線を退き プロデューサーとしての道を歩み始めた…… 十分に若いし、現役としても まだまだ未来のある有望株だったが 本来、アツシの求めていたものはプロデューサーへの道…… アツシの作った最強の楽曲を 最強のメンバーで世界に発信する…… それがアツシの夢だった。 楽屋ではすでにアサキとトールがスタンバイしていて ヒサシに連れられて楽屋に現れたアツシと顔を合わせた二人は 驚きのあまり、目を丸くして声を上げた。 「えええぇぇぇ――――! ……まさか……」 「うっ……嘘でしょ……!?」 ヒサシがドヤ顔で、得意気に声をうわずらせる。 「へへっ……嘘じゃねーって……!  本物のA'zNAILのアツシさんだぜ……!」 ヒサシに紹介されたアツシは軽く頭を下げながら サングラスを外して二人に話しかけた。 「……どーも。 ……アサキとトールだったな……  ヒサシから話は色々聞いているよ……  今日はマーヴェラスのライブ  じっくり観させてもらうから……よろしくな。」 口をパクパクさせながらアサキがヒサシに話しかける。 「あ、あんた、なんでこんなすごい人と知り合いなのよ……!」 「いやぁ……実は俺が世話になってるライブハウスで  A'zNAILは昔、よくライブやっていたみたいでさ……」 A'zNAILの知名度が全国に広がる前 ヒサシの出入りしているライブハウス 下北沢CIPHER(サイファー)を アツシたちは拠点として活動していた。 その縁もあって解散後もアツシは CIPHERを懇意にしていて そこでヒサシはアツシと出会う。 たまたまヒサシが出演していた コピーバンドセッションイベントに アツシが顔を出していたのがきっかけだった。
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