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#3 蒼い月の夜に
私鉄沿線脇の細い道を……
私とユータを乗せた自転車が走る……
暗闇に差し込む街灯の灯り……
時々、通りすぎる電車の窓から漏れる光に
私たちの身体は途切れ途切れ……
古い映画の様に映し出される……
いつもと違う帰り道……
ブレーキを掛けるたび……私の身体が……
ユータの背中に密着して……そして少しだけ離れて……
遠くで……通りすぎていった……
電車の揺れる音が微かにして……
私たちは無言のまま……緩やかな坂道をくだる……
背中に触れた瞬間……
私の高鳴る心音が……ユータに伝わっていないかな……?
伝わっていたら……恥ずかしいな……
こんな夜……初めてだ……
とっても月が……蒼い……
そんな事を思っていると、小高い坂の上にある
小さな公園の前まで来たところで……ユータは自転車を止めた……
静かに夜空を見上げながら……ユータが呟く……
「つぼみ……すごいよ……月があんなに……蒼い……!」
確信めいた何かがまた、私の脳裏を過った……
一度や二度じゃないよ……こんな事……
二人で同じ刻を過ごし……同じ事……考えてる……
同じ気持ちで……あってほしい……
私はユータの目を見ながら……こう……呟いたんだ……
「私も……私も同じこと……考えてた……!」
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