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なぜ私が課長などという役職をわずか2年で得られたのか?
もちろん出身大学のブランド。そう周りは「大声で囁く」。
聞こえよがしに言うってこと。
人事がどう考えたかは知らないものの、仕事だけはとにかく量も質もこなしたし、
大学を鼻にかけたことも一度もない。
まあ妬み、嫉み、僻みは今に始まった話じゃない。
というより、それまで課長だった先輩が年度途中の、それも中途半端な時期に寿退社をしたから、穴埋めのような感じで何となく配置された、というのが正しい経緯だったりするのだ。
鷲尾は必然的に部下。
2年もあればそれなりに鷲尾も仕事をこなすようになっていたものの、
彼は今度は別件で周りをお騒がせしていた。
とにかく女性関係が派手なのだ。一度寝た相手と二度会うことはない、というほどに言葉通り女を「とっかえひっかえ」。
周りとは、お察しだろう、現代を最先端を、突っ走る女子社員らだ。
その現代の電子機器を担っているのが私たちのような会社であると言う事実が何とも皮肉。
第一印象からは大分鷲尾の見方は変わっていたものの、それは負の方向でしかない。
切れ長の目がクール、なんていやいや、単純に周りの女を見下している目だから。格好よくキメているアレじゃないから。
微笑みがイイ、なんていやいや、完全に騒ぐ女子を見下している薄笑いだから。勘違いしないで、見苦しい。
当然、鷲尾の相手にする女性は社内外を問わない。
毎朝、は言い過ぎだとしても、週に1度も女の話題を攫わないことはなかった。
だから女は馬鹿だ、抜けている天然ぐらいが丁度いいなんて言われるんだ。
おかけで地位を築くのにどれほど男性の比にならない力が必要だったことか。
ある朝。
鷲尾が珍しくキスマークを首にぶら下げて出勤した。女子社員がきゃあきゃあ騒ぐ。
私の中で何かが切れた。
「鷲尾。新規の案件。」
そう言って第2会議室へと鷲尾を呼び出した。
常々課のメンバーを「女王様」こと私が第2会議室に部下を呼び出すのはよくあることだ。仕事の依頼は必ず会議室でする。
半導体技術は企業の製品、いや未来を握るのだ。
企業によってはうちと契約していることを、うちとの契約を「検討中である」ことを内密にしなければならない。それは企業の大小を問わない。
だから、それぞれが抱える仕事はむやみにシェアしないのだ。
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