第1章

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屋敷の縁側にて。二人は新しくできた提灯をここで見ることにした。秋も深まるこの季節、静かな夜には虫たちの声しか響いておらず、自然と心が癒される。 「まあ、提灯を見るならこれくらいの時間がちょうどでしょうね」 「うぬ、月明かりも程よくて見るにはもってこいじゃのぉ」 そう言うと、弥生は完成した提灯の中にマンダラゲの花を入れた。 すると、先程まで光っていなかった提灯が淡くそして柔らかな白い光を灯しながら光りだしたのだ。その優しい光を、二人は静かに見守っている。 この提灯の素材になっている和紙は弥生特製の特殊なもので、作ってすぐに花を入れても何も起きないが、しばらくして花を入れると和紙が花に光を灯させるのだ。 「…今回は苦労した甲斐があったんじゃないかしら…」 「…うむ、作ったワシが言うのもなんじゃが…これは綺麗じゃの…」 「そうね、でもこれを売りに出しちゃったら、買い手の人が提灯の中のマンダラゲで眠っちゃうかもしれないから、売るのは無理っぽいわね」 「そうじゃのぉ、ワシですらぐっすりじゃったから人間には少しばかり危険かもしれんの…というより売るのは惜しい出来栄えで売りとうなくなってきた」 「同感ね。屋敷(ここ)に置いときましょう」 「うぬ」 提灯に見惚れながらも会話する二人であったが、この後結局この提灯を屋敷に置いておくことにしたらしい。 二人はしばらく提灯を眺め、小一時間ほど経った時に観賞を終え、提灯を持って部屋の中へと入っていった。 二人が部屋に持って入った後も提灯は淡く光っていた。 「弥生。手を洗ってよ?また寝込まれてももう知らないからね」 「…はいなのじゃ」 1話おわり
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