大きな変化

51/52
前へ
/211ページ
次へ
俺の強引な指示(と言うより命令に近い)に、尚翔は素直に返事をした。 そして、何故かクスリと笑った。 「…んだよ。笑ってんなよ。」 「あ…ごめんなさい。でも、なんか意外で…それに、安心したから…」 その言葉通り、尚翔は安心したような笑みを浮かべて俺を見た。 その柔らかい笑みに、胸の奥をギュッと掴まれたような感覚を覚える。 「ラブレターのこと潤先輩に知られたら………先輩に、『ソイツと付き合え』とか言われるかも、って怖かった…」 「………」 「おれもこのラブレターが普通だって思えなくて、それだけでも怖いのに。その上先輩にまで突き放されたらと思うと………怖くて怖くて、言えなかった。」 「魁斗には、言えたのにか?」 思わず飛び出した言葉は、まるで拗ねたガキみたいだ。 言った瞬間後悔する。 尚翔は少しだけ困ったような顔をしたが、すぐに微笑んだ。 「今朝たまたま魁斗先輩とここで遭遇して……一発でバレちゃった。魁斗先輩になら話してもいいかなと思ったから……」 ソレを聞いて、複雑な気持ちになる。 尚翔の言い分はわかる。 わかるのに、悔しいと感じてしまう。 そしてそう感じる自分への驚きと戸惑い。 咄嗟に湧いた思い。 (……頼ってくれればいいのに……)
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

562人が本棚に入れています
本棚に追加