魔の手

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昼休みになり、屋上へ向かう。 扉を開けると、 「あ…」 見覚えのある後ろ姿。 「尚翔。」 「!」 尚翔は俺に気づいていなかったらしく、俺の呼び掛けに驚いて振り向いた。 「あ………先輩。」 「………何を隠した?」 咄嗟に尚翔が何かを鞄に詰め込んだのを、俺は見逃さなかった。 まぁ、予想はついているが。 「な、何も…」 「嘘つけ。見せろ。」 「だから何も…」 「尚翔。」 「………………………ハイ。」 俺の威圧的な空気に根負けした尚翔は、渋々今しがた隠したソレを俺に差し出した。 「………」 …やっぱりか。 差し出したソレは、便箋。 多分、俺が来るまで読んでいたのだろう。 『西崎尚翔君 こんなにも君のことが好きなのに、どうして振り向いてくれないのかな? 最近一緒にいる不良のせいだろう。 ソイツに脅されて、仕方なく一緒にいるんだろう。 雑巾のように使われて、最後には捨てられる運命だ。 僕なら君をそんな運命から救ってあげられる。 だから1日でも早く僕の恋人になろう。 いつも君を見てる。 君を心から愛する者より。』
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