魔の手

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「コイツ、なんでお前の番号を知ってる?」 「………」 「尚翔。」 「わからない…」 尚翔が困惑した表情で首を振った。 嘘ではなさそうだ。 番号を知ってるってことは… 「お前の知り合い…の可能性が高い…」 「………」 それか、犯人が善意を装って尚翔の知り合いから聞き出したか… どちらにしろ、やっていることはタチが悪い。 「尚翔。何かあったら俺に言えっつっただろ。」 「…ごめんなさい…」 謝ってほしいワケじゃない。 ただ心配だから言ってほしいだけだ。 そんな俺の心境を知ってか知らずか、 「こんなことに先輩を巻き込んで、迷惑かけて、嫌われたくない…」 そう尚翔が言った。 …それこそ、有り得ない。 少し前の俺なら、有り得ただろうが。 今は……… 「迷惑とか嫌うとか、ねぇから。」 「………」 「大体今まで散々人のこと追い回しといて、今更何遠慮してんだ。」 「…そうだね。」 呆れたように俺が言うと、尚翔が淡く微笑んだ。 笑ってる場合じゃねぇだろうに。 俺に打ち明けて安心したのだろうか。 そう思うのは、俺も少なからず安心したからだ。 …尚翔の笑みを見て。    
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