魔の手

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その声を聞くと、胸が締め付けられる。 好きで好きで、何度も諦めようとしたけれど、やっぱり諦められなかった。 おれにとっての、全て。 「…何をしてる?」 おれの手首が掴まれているのを見た潤先輩は、眉をひそめて訊ねた。 先輩がここにいるのは、偶然だろう。 でもそれがおれにとっては、運命で、奇跡のように思えた。 そんなことを口にしたら、先輩は笑うだろうか? 「高藤 潤………」 一方の朔原先輩は、潤先輩を認識した瞬間、憎々しげにその顔を歪めた。 掴んだおれの手首は放さないまま。 「見ての通り、彼を解放してあげてるんだ、僕が。」 「解放?」 「お前が脅してパシりにしてる、可哀想な彼を、お前から、ね。」 それを聞いた潤先輩の表情が、一瞬にして険しくなる。 「…テメェか。尚翔にクソみてぇな手紙送ってた奴は。」 地を這うような低い声。 他の生徒なら凍りついてしまうようなその声にも、朔原先輩は動じなかった。 「失礼だな。れっきとした恋文だよ。いきなり接触して怖がらせたくないからね。徐々に僕の存在を意識させたまでだよ。」 …それなら、むしろ逆効果だ。 おれと潤先輩の中完全に悪質ストーカーだ。 「そんなんどうでもいい。それより………」
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