魔の手

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潤先輩はツカツカとこちらに近づくと、おれの手首を掴んだままの朔原先輩の腕を、 「コイツに触んな。」 「─────いっ…!?」 乱暴に掴んだ。 相当強い力で掴んでいるのか、朔原先輩の顔が苦しげに歪む。 痛みからか一瞬、朔原先輩の手が緩む。 その隙を突いて潤先輩がおれから朔原先輩を引き剥がし、おれの身体を引き寄せた。 ───まるで。 まるでおれを渡さないと言わんばかりに、潤先輩の腕がおれの胴に回されている。 こんな状況で思うことじゃないけど。 …嬉しくて、ドキドキした。 「…お前こそ、西崎君に触るな。」 「テメェに触られるよりずっとマシだろうが。」 「西崎君が汚れる。」 「んだと?」 繰り広げられる応酬の中でも、潤先輩はおれを放さない。 抱きしめるように、おれの身体を先輩の身体に縫い止めている。 さっきまですごく怖かったのに、今は潤先輩がいるから、怖くない。 潤先輩がおれを守ってくれるのが、どうしようもなく嬉しい。
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