魔の手

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「とにかく、彼を早く解放しろっ」 「!」 苛立ちに語調を強め、朔原先輩がおれに向けて手を伸ばすのが見えた。 「…っ」 恐怖で思わず潤先輩の胸に顔を埋める。 その時、おれを抱きしめる逞しい腕に一層力が込められるのを感じた。 「…コイツに指1本でも触れてみろ。」 頭上から、怒りを滲ませた声が降り注ぐ。 「その(ツラ)の原型が思い出せねぇようにしてやる。」 「いっ───いたいっ!!」 朔原先輩の痛みを訴える声に顔を上げると、こちらに伸ばされた朔原先輩の手を、潤先輩が掴んでいた。 ギリ…と。 潤先輩の指が食い込み、朔原先輩は更に顔を歪めた。 「痛いっ……痛いっ! 放せっ!!」 切羽詰まった叫び声に、漸く潤先輩はその手を放した。 朔原先輩の手は、潤先輩に強く掴まれていたせいで赤くなっている。 それだけ、潤先輩の力が強かったのだ。 「失せろ、ストーカー野郎。もしまた尚翔(コイツ)に近づいたら………ただじゃおかねぇ。」
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