魔の手

13/25
前へ
/211ページ
次へ
『必ず君を、その不良から救ってあげるから。それまでの辛抱だから。』 そんなセリフを残し、朔原先輩は校舎の中に戻っていった。 残されたおれと潤先輩は、暫し無言。 「………」 「………」 「…あ…あの、先輩…」 「あ? ………………あっ! わ、悪ィ…」 おれを抱き寄せていた腕が、パッと離される。 …ずっと、あのままでいたかったな… なんて我が儘、言えないけど、やっぱり名残惜しい。 「………あー…」 潤先輩は気まずそうで、おれと目を合わせようとしない。 …自分の行動を、後悔しているのだろうか。 おれを助けたことを……… 「尚翔。」 「! はい…」 「………変なこと、されてねぇか?」 「え…………あ、うん。大丈夫…です。」 「………」 また無言。 先輩は何か言いたげで、けれど口にするのを躊躇っているように見えた。 すると、不意に先輩がおれの手を取った。 さっきまであの人に掴まれていた方の手だ。 先輩はおれの手をじっと見つめ、呟く。 「…赤くなってる。」 「あ…」
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

562人が本棚に入れています
本棚に追加