魔の手

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* * * * * 手首を掴んでいる男。 対する尚翔の、怯えた顔。 ただならぬ状況だということはわかった。 そして、じわりと沸き上がる苛立ち。 知らない奴が尚翔に触れているという光景が、俺を苛立たせた。 尚翔を守るようにして、ソイツを威嚇する。 ソイツは意味不明なことを告げて立ち去っていった。 「…1人で行動するなっつっただろうが。」 口を突いて出たのは、内心とは裏腹な言葉。 本当は、安堵していた。 手首を掴まれ赤くなってはいたが、それ以外は何もされていないようで、俺がここに立ち寄ってよかった。 もしそうでなければ、今頃あの男に何をされていたか… 想像しただけで反吐が出そうだ。 「…ごめんなさい…迷惑かけて………おれが油断してたせいで、先輩に迷惑───」 「違う。」 迷惑だなんて思ってない。 俺は即座に尚翔の言葉を遮った。
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