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手首を掴んでいる男。
対する尚翔の、怯えた顔。
ただならぬ状況だということはわかった。
そして、じわりと沸き上がる苛立ち。
知らない奴が尚翔に触れているという光景が、俺を苛立たせた。
尚翔を守るようにして、ソイツを威嚇する。
ソイツは意味不明なことを告げて立ち去っていった。
「…1人で行動するなっつっただろうが。」
口を突いて出たのは、内心とは裏腹な言葉。
本当は、安堵していた。
手首を掴まれ赤くなってはいたが、それ以外は何もされていないようで、俺がここに立ち寄ってよかった。
もしそうでなければ、今頃あの男に何をされていたか…
想像しただけで反吐が出そうだ。
「…ごめんなさい…迷惑かけて………おれが油断してたせいで、先輩に迷惑───」
「違う。」
迷惑だなんて思ってない。
俺は即座に尚翔の言葉を遮った。
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