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その後。
俺は授業に出る気になれず(…元々真面目に出ていなかったからいつものことか)、屋上に居た。
勿論、尚翔は教室まで送った。
尚翔も、教室に居た奴らも、それはもう驚いた顔をしていた。
…うん、まぁ確かにな。驚くのも無理はない。
この俺が、子どもの送り迎えみたいなことをしてるんだから。
………あとは、まぁ………好きだと自覚してしまってから、離れるのが名残惜しかった、というのも実はある。
「尚翔。今日は誰かと一緒に帰んのか?」
「ううん。今日も潤先輩と帰るつもりだよ。」
「…ん。」
尚翔の返答にくすぐったい気持ちになり、それを誤魔化そうと尚翔の頭をくしゃりと撫でる。
「授業全部終わったら………迎えに来る。1人で屋上まで来るな。」
「………先輩……なんか母親みたい…」
「はっ!? お前な…」
尚翔のズレた発言に、一気に脱力。
こっちは一応真剣に言ってんのに、当のコイツはなんでこんな呑気なのか…
「ごめんね。でもまさかここまで心配してもらえるとは思わなかったから、ビックリしたのと、あと嬉しくて。」
そう告げる尚翔の淡い笑みは、本当に嬉しそうだ。
…自分の心臓の音が五月蝿い。
「っ……とにかく…俺がここに来る。いいな?」
「うん。」
去り際に周囲を一瞥すると、
驚き、好奇、恐怖等々、様々な視線がこちらに向けられていた。
…俺と関わるだけで、あんな視線を尚翔にまで向けられることになる…
そのことに後ろめたさを感じないワケじゃない。
けれどもう以前の状態には戻れないことも、俺自身理解していた。
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